飛込競技の見方 (大分県水泳連盟 飛込委員長
茶木康寛氏の文より引用)
飛込競技の歴史・変遷
飛込競技を考案し様々な型を作り出したのはドイツだとされていますが、スウェーデンの器械体操選手が練習のために始めた事で注目を集めました。競技としてはイギリスでグレースフルダイビングコンテストが催されたのが始まりと考えられています。オリンピックでは、セントルイス大会(1904年)で高飛込が、さらにロンドン大会(1908年)で飛板飛込が正式採用されました。日本においては、1922年に全国水上大会で飛板飛込が初めて行われました。当初は華麗さを競う優雅な競技でありましたが、競技用具とトレーニング方法の進歩により、現在では非常に高度な技術をともなった演技が行われるようになりエキサイティングな競技になっています。また、近年ではオリンピックや世界選手権において、2名1組で競技するシンクロナイズドダイビングも行われるようになってきました。
競技種目
競技種目は、高飛込と、飛板飛込に大別されます。
高飛込は、高さ5m、7.5m、10mの固定された台から演技が行われ選手にとっては高さを克服することが重要な課題になる種目です。10mから演技した場合には、入水速度は時速52kmには達しますので、その衝撃にも耐えることが求められる豪壮な点が特徴です。
飛板飛込は、1m、3mの高さに設置された弾力のある板を使用して演技が行われます。以前は松または檜の板が使われていましたが、現在では、材質はジュラフレックスと呼ばれるアルミの軽合金が使われています。近年は飛板の性能が向上し、かなりの反発力が得られる様になっていますので、いかにこの力を有効に巧みに利用出来るかがポイントになる種目で、柔軟で優美な点が特徴です。
国体では、3m飛板飛込競技と高飛込競技がそれぞれ男女別に分けられ、また少年の部と成年の部でも分けられ合計8種目で競技を行います。
近年競技会の種目にも取り入れられ始めたシンクロナイズド競技は、2名1組の競技者により演技が同時に行われ、10m高飛込、3m飛板飛込があります。個々の競技者の演技の完成度に加え、両競技者の同調性も判定されます。国体ではデモンストレーションとして演技されます。
演技種目と難易率
競技会で演じられる演技種目は3〜4桁の数字とアルファベット((A〜D)により表され、それぞれの数字とアルファベットが演技の内容を表します。
(例:205B=後宙返り2回半 蝦型・5132D=前宙返り1回半1回捻り 自由型)
踏切と回転の方向により、以下の1〜6の「群」に分類されておりその「群」を表わす。
1=第1群「前飛込」
台の前方に向かって踏切、前方向に回転する。
2=第2群「後飛込」 台の先端に後向きに立ち、踏切って後方向に回転する。
3=第3群「前逆飛込」
台の前方に向かって踏切、後方向に回転する。
4=第4群「後踏切前飛込」
台の先端に後向きに立ち、踏切って前方向に回転する。
5=第5群「捻り飛込」 前記の第1〜4群に捻りを加える。
6=第6群「逆立ち飛込」
固定台上で逆立ちをしてから演技を行い、高飛込競技だけで演じられる。
難易率
難しさの度合いを示すもので一定の計算式で導かれた、係数のことで「難易率」と呼ばれる。現在は手計算ができるため、最高難易率は特に制限されていない)
演技構成
難易率合計に上限がありシンプルな演技での制限選択飛が前半、そして難易率に縛られず鋭い判断力と高度な技術を要する自由選択飛が後半で演じられます。
尚、国体・日本室内選抜大会・日本選手権では自由選択飛だけで行われます。このことは一演技のミスでも大幅な順位の下落につながることから、選手にとって非常に緊張を強いられる競技会となります。男子で6回(男子の飛板飛込は、1種目は重複しても良い)、女子で5回の演技をすべて違う群より選び行います。体操の跳馬やスキーのエアリアルのように得意な回転方向だけで演技することは出来ません。
得点の計算方法
演技の審判は7名の審判員によって行われ、演技の完成度によって0.5刻みで0点から10点までの範囲で採点します。競技会によっては5名で審判される場合もありますが国体は7名審判員で実施されます。
通常の7審判の場合、計算方法は最高点から二人の点数を除き、残った3名の採点に難易率を乗じたものが得点になります。
シンクロナイズドダイビングの場合、演技の採点を行う審判とシンクロ(2名の選手の同調の度合い)を採点する審判に分かれて行なわれます。
観戦の醍醐味
以上のように飛込は難易率と審判の採点によって計算される得点によって順位が決定されます。審判の採点の何倍もの得点を得る為には難易率の高い種目を演技することが必要です。しかし難易率の高い種目は失敗する可能性が高いのも事実です。
低い難易率の演技を無難にまとめるのか、失敗を覚悟で高い難易率の演技に挑むのか、選手の駆け引きは自分との戦いでもあるのです。
途中まで低い順位の選手が最後に高い難易率の演技を決めて上位に食い込む事も、またその逆のこともあり、飛込では最後の演技が終わるまで気を抜けません。
競技会のプログラムには得点を記入する欄があります。そこにアナウンサーが各演技ごとに発表する得点を書き入れながら観戦すると、現在のトップは誰なのか、また順位の入れ替わりも良く分かりいっそう興味深くなるとおもいます。また、自分自身が審判として採点をしてみるのも面白いでしょう。違う選手の同じように見える演技が審判の採点と大きく食い違うこともあります。けれどそのうち自分なりの採点が出来るようになってきます。さあ、あなたも審判の一員となってあなただけの飛込競技の試合結果を出してみてください。きっと新しい発見があるはずです。
頭から2つ目の数字
頭から3つ目の数字
4桁の数字で最後の数字
数字の後のアルファベットは演技の型を示す。
第1〜4群の演技(最初の数字が1〜4)の場合・・・「1」は飛び出し時から明確に伸型の姿勢を行う[途中宙返り]を伴う演技を、「0」は伴わない演技を示す。
第5群と第6群の演技(最初の数字が5〜6)の場合・・・踏切と回転の方向により、分類される「群」(上記の第1〜4群と同じ)を示す。
演技の半回(1/2)ごとの宙返りの回数を示す。(1回転半して頭から入水する場合は「3」と表わす)
第5群と第6群の演技(最初の数字が5〜6)の場合4桁目で表されるのもがあり、数字は半回(1/2)ごとの捻りの回数を示す。
A=伸型:B=蝦(えび)型:C=抱型:D=自由型(捻りを伴う飛込を表わし、A,B,Cいずれかの型を自由に選択し、組み合わせることが出来る)
各審判員は助走、踏切の姿勢の正しさ及び確実さ、飛び上がりの高さ、空中におけるフォームの美しさ、並びに入水姿勢、入水角度(水面に垂直に入り、水しぶきが少ないのが良い。)などを総合的に見て、難易を考えないで各自の主観により採点します。おおよそ、その採点基準は次のとおりです。
○ 不満足なもの |
0.5〜2点 |
○ 不十分なもの |
2.5〜4.5点 |
○ 満足なもの |
5〜6点 |
○ 良好なもの |
6.5〜8点 |
○ 非常に良好なもの |
8.5〜10点 |